塩船観音寺は、東京都青梅市塩船にある真言宗醍醐派の別格本山です。山号は大悲山で、関東八十八ヶ所霊場の第七十二番札所としても知られています。また、東国花の寺百ヶ寺の東京第十三番札所や、奥多摩新四国八十八ヶ所霊場の第五十九番札所としても名高い寺院です。御詠歌は『わすれずも みちびきたまえ かんぜおん ぐぜいのふねに のりていたらむ』です。
塩船観音寺の創建は大化年間(645年 - 650年)にさかのぼるとされています。伝説によれば、若狭国から来た八百比丘尼が紫金の千手観音像をこの地に安置したのが始まりです。「塩船」という地名は、天平年間(729年 - 749年)に行基がこの地を訪れた際、周囲が小丘に囲まれ船の形に似ている地形を見て、仏の大きな願いを象徴する「弘誓の舟」にたとえて名付けられたと伝わります。
平安時代の貞観年間(859年 - 877年)には、安然という僧が12の坊舎を建て、寺院は大いに栄えました。その後、鎌倉時代には武蔵七党の一族、金子氏の庇護を受け、室町時代には青梅・奥多摩地域に勢力を持っていた三田氏の帰依を得て繁栄を続けました。
室町時代後期に建立された本堂、阿弥陀堂、仁王門は、国の重要文化財に指定されています。また、本尊である十一面千手千眼観世音菩薩像(千手観音)や、その周囲に並ぶ眷属の二十八部衆像も同様に重要文化財に指定されています。
塩船観音寺は、春のつつじが非常に有名で、特に5月には「つつじ祭り」が開催され、多くの観光客が訪れます。この時期には入山料が必要で、観光だけでなく地元の人々にとっては初詣の対象としても親しまれています。
室町時代に建立された本堂は、木造で寄棟造り、屋根は奥多摩の虎葺きと呼ばれる茅葺に杉皮を葺いたものです。秘仏である本尊の十一面千手千眼観世音菩薩像(重要文化財)は、精巧な厨子の中に安置されています。厨子の扉の内側には、普賢菩薩と文殊菩薩が描かれています。さらに、毘沙門天立像(青梅市有形文化財)、不動明王立像、二十八部衆立像(重要文化財)も本堂に安置されています。
室町時代に建てられた山門は、木造の三間一戸八脚門で、屋根は茅葺です。当山の山号である「大悲山」の扁額が掲げられており、阿形・吽形の金剛力士像(二駆)は東京都指定有形文化財に指定されています。
木造の寄棟造りで、かつては茅葺きでしたが、昭和36年に国の指導により銅板葺きに改修されました。阿弥陀如来坐像、聖観音菩薩立像、勢至菩薩立像の阿弥陀三尊像が安置されており、永代供養のお位牌も奉安されています。
薬師堂は、木造の寄棟造りで屋根は茅葺き、三間の小仏堂です。平安時代後期に作られたと推定される薬師如来立像が安置されています。この薬師如来は、古来より中風除けやぼけ封じの御利益があるとされています。
護摩堂は、弘誓の舟にたとえられ「弘誓閣」と称されています。昭和中興三十周年記念事業の一環として建立されました。寺務所では、祈願受付や御朱印の授与も行われています。
塩船観音寺の創建に深く関わる八百比丘尼の尊像は、護摩堂の内陣に安置されています。さらに、弘法大師空海と不動明王も堂内で祀られています。
つつじ園の山頂から境内を見渡す13メートルの平和観音像は、開創1350年記念事業の一環として建立されました。右手に施無畏印、左手に与願印をして、水瓶を持ち、大慈大悲の功徳を衆生に与えています。
昭和中興三十周年記念事業において建立され、自家用車をはじめとするあらゆる車両の交通安全を祈願しています。運転者と同乗者の身の安全を願うため、多くの参拝者が訪れます。
毎年5月3日に行われる当山の例大祭「柴灯大護摩供」では、火生三昧修行が行われ、その際の御本尊である青銅製の不動明王立像が崇拝されています。
旧鐘楼は四脚の茅葺き屋根で、江戸時代寛永18年(1641年)に作られた銅鐘が安置されています。この鐘は青梅市の有形文化財に指定されており、現在は文化財保護のために打鐘を中止しています。
境内の参道の両側に立つ二本の大杉は、樹高約40メートル、目通り約6メートルの巨木で、樹齢900年を超えています。夫婦杉とも呼ばれ、東京都の天然記念物に指定されています。
納札堂は、塩船観音寺で授与された古札や御守を納める場所です。一年間の守護に感謝を込めて古札をお返しください。他寺社の御札の納札はご遠慮ください。
参拝の前に手水を行う場所です。本堂に上がる前にここで手を清めてから参拝を行いましょう。
参拝後に休憩ができる信徒会館や、御守やお札などが購入できる売店も設けられています。
塩船観音寺は、その美しい自然環境と四季折々の花々で知られています。特に春に咲き誇るツツジは有名で、多くの観光客がこの季節に訪れます。境内には様々な種類の花が植えられており、参拝者は一年を通じて自然の美しさを楽しむことができます。
塩船観音寺で最も有名な花はツツジです。特に5月には「つつじ祭り」が開催され、約20,000本ものツツジが一斉に咲き乱れ、境内を華やかに彩ります。赤、ピンク、白、紫など色とりどりのツツジが、訪れる人々の目を楽しませます。
見頃:5月上旬から中旬
春にはツツジに先立って桜も美しく咲きます。境内にはソメイヨシノや八重桜などの桜の木が点在しており、特に境内の山門近くは桜の名所として知られています。桜の花びらが舞い散る様子はまさに圧巻です。
見頃:4月上旬から中旬
梅雨の季節には、塩船観音寺のアジサイが見事に咲き誇ります。境内のあちらこちらで鮮やかな青や紫のアジサイが訪れる人々を迎え、しっとりとした雰囲気を醸し出します。特に雨に濡れたアジサイの美しさは格別です。
見頃:6月中旬から7月上旬
夏のもう一つの見どころは、塩船観音寺の池に咲くハスの花です。涼しげな白やピンクのハスの花が池の上に浮かぶように咲き、静かで厳かな雰囲気を感じさせます。ハスの花は仏教とも深い関わりがあり、観音寺の境内に非常に調和しています。
見頃:7月中旬から8月上旬
秋には、彼岸の時期に合わせて彼岸花が咲き誇ります。真紅の花が境内のあちこちに咲き、秋の訪れを知らせます。この時期、塩船観音寺の静かな雰囲気に、燃えるような赤い花がアクセントを加えます。
見頃:9月中旬
秋の終わりには、境内のモミジやカエデが色づき、赤や黄色、橙色の美しいグラデーションを楽しむことができます。特に本堂周辺やつつじ園の紅葉は見応えがあり、多くの参拝者が訪れます。
見頃:11月中旬から下旬
冬になると、境内ではサザンカの花が見られます。ピンクや白の可憐な花が寒空の下で咲き、冬の冷たい空気に華やかさを添えます。サザンカの花は、他の季節に咲く花々が少ない冬の時期に、貴重な彩りを提供してくれます。
見頃:12月から2月
ロウバイは冬の代表的な花の一つで、塩船観音寺でも1月頃に黄色い花を咲かせます。ロウのような透明感のある花びらが特徴的で、寒さの中でその香りが広がり、訪れる人々を和ませます。
見頃:1月から2月
塩船観音寺の所在地は、東京都青梅市塩船194です。アクセスとしては、JR青梅線の東青梅駅から車で約15分、もしくは河辺駅北口から都営バスまたは西東京バスを利用して訪れることができます。また、圏央道「青梅IC」からは約10分の距離にあります。